B-ALL

【B-ALL】Hypodiploid ALLのゲノム異常

  1. Low hypodiploidとNear-haploid ALLを中心としたWGS/WESを用いたゲノム解析
  2. Near-haploid:NF1、CREBBP、IKZF3、PAG1異常
  3. Low-hypodiploid:TP53(90%)、RB1、IKZF2異常
  4. 小児のLow-hypodiploidのTP53異常は約半数がGermline変異
  5. Hypodiploid ALL細胞はBCL2阻害薬やPI3K阻害薬に感受性あり

染色体数の異常によって引き起こされるB-ALLの一つに、Hypodiploid ALL、低二倍体白血病がある。正常の46本ではなく、染色体数が44本以下の白血病がこれにあたり、失われた染色体数に応じてさらに細分化される。
(1)High hypodiploid ALL:40-44本(40-43/44本をさらに分ける場合もある)
(2)Low hypodiploid ALL:30-39本/DNA indexが0.65-0.82
(3)Near-haploid ALL:24-29本/DNA indexが0.65未満

一般的に、Hypodiploid ALLは予後不良なサブタイプとして知られており、特に寛解導入療法終了時のMRD陽性のHypodiploid ALLは極めて予後不良である。また、MRDの結果にかかわらず移植によっても大きな利益は得られない(MRD陽性は移植による改善傾向はある)。

このような非常に予後不良なサブタイプに対しては、やはり基盤となるゲノム異常を明らかにすることで、標的治療や免疫療法を用いた治療が使える可能性がないかを考えていくことが重要である。少し古いが、2013年にNature Geneticsに報告されたHypodiploid ALLのゲノム解析の論文で、タイトルは「The genomic landscape of hypodiploid acute lymphoblastic leukemia」である。

この論文では124例の小児Hypodiploid ALLを登録している。50例のNear-haploid ALL、26例のLow-hypodiploid ALLが含まれており、それぞれ18例、8例において、ゲノムの倍化である”Masked hypodiploidy”を呈していた。Near-haploid ALLとLow-hypodiploid ALL全例において21番染色体の欠失は見られなかった。

NGSによるゲノム解析はNear-haploid ALLが25例、Low-hypodiploid ALLが15例で行われた。

Near-haploid ALLにおいて、RTK-RAS経路の異常とCREBBPなどのヒストン修飾関連遺伝子の異常が多くみられた。特にNF1の異常は約45%でみられ、その75%が両アレルに異常をきたしていた。NF1の異常はExon15-35の欠失が8割でみられ、これはRAGによる異常な切断による影響と考えられた。他に、IKZF3や6p22のヒストン遺伝子群の欠失もみられた。さらに約10%の例でPAG1の欠失みられた。PAG1はSrcキナーゼを負に制御しているため、欠失によりSrc経路、BCRシグナルが活性化する可能性がある。一方で、Dasatinibなどによる標的治療の効果がみられる可能性も示唆していると考えられるが、どうだろうか。

Low-hypodiploid ALLにおいては、90%以上の例においてTP53の異常がみられた。他に、RB1異常が4割、IKZF2異常が約半数の例で検出された。RTK-RAS経路の異常やPI3K経路の異常を有する例もみられたが、IKZF2異常を持つ例とは排他的であった。検出されたTP53の異常は、小児・成人共にDNA-binding領域に影響を与えるものであったが、重要なことに、小児と成人でTP53の変異の種類が異なる。小児では約半数がGermline変異であるのに対し、成人では全例がSomatic変異であった。つまり、小児Low-hypodiploid ALLの3-4割は、Li-Fraumeni症候群から派生した白血病である可能性があるということである。そのため、小児白血病でLow-hypodiploid ALLを診断した場合は、遺伝子カウンセリングとTP53の検査が重要となる。

最後にNear-haploid ALLの細胞株であるNalm-16やPDX細胞を用いて、MEK阻害薬、PI3K/mTOR阻害薬の効果をみたところ、MEK阻害薬の細胞増殖抑制効果は見られなかったものの、PI3K/mTOR阻害薬は細胞の増殖を抑制した。最近はBCL2阻害薬の効果も示されており、このあたりは今後の標的治療として重要になってくると考えられる。

Holmfeldt L, Wei L, Diaz-Flores E, et al. The genomic landscape of hypodiploid acute lymphoblastic leukemia. Nat Genet. 2013;45(3):242-252. doi:10.1038/ng.2532

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