T-ALL

【COG AALL0434②】ネララビンはABFMレジメンに追加可能であり、小児およびAYA T-ALLの予後を改善する

  1. 2007年から2014にかけて行われたCOGの1-31歳のT-ALLに対する臨床試験AALL0434のnelarabine部分のランダマイズ結果
  2. 5年DFSはnelarabineありで88.2%、なしで82.1%とネララビン追加の方が良好であった
  3. C-MTX+nelarabineが最も5年DFS良好であった
  4. 神経毒性も含めてABFMレジメンへのネララビン追加は問題なかった

COGは2007年から2014年にかけて世界最大規模ともいえるT-ALL(一部リンパ腫を含む)の臨床試験、COG AALL0434を行った。この試験では、augumented-BFM (ABFM)レジメンを骨格として、以下の2×2のランダム化を行い、T-ALLの治療成績の向上をはかった。
(1)IM相におけるMTX強化の戦略
Capizzi-style(C-MTX)vs HD-MTX
(2)nelarabine使用の有無

(1)のIM相におけるMTX投与方法に関するランダマイズは、C-MTXの方がHR群において大きな優位性があり、HD-MTXが有意であったB-ALL HR群とは真逆の結果であった。

【COG AALL0434①】小児およびAYAのT-ALLではCapizzi-style-MTXレジメンでHR群の予後が良好であった 2007年から2014にかけて行われたCOGの1-31歳のT-ALLに対する臨床試験AALL0434のMTX部分のランダマイズ結果5...

この論文では、(2)寛解導入以後にネララビンの追加投与を行うかどうか、という点をランダマイズで調べた報告であり、タイトルは「Children’s Oncology Group AALL0434: A Phase III Randomized Clinical Trial Testing Nelarabine in Newly Diagnosed T-Cell Acute Lymphoblastic Leukemia」で、2020年にJCOに発表された。

ネララビンは、体内でara-Gに変換されるプロドラッグで、分解速度が遅く、T細胞系により蓄積しやい特徴がある。再発・難治性T-ALLに対してネララビン単一でのphaseII試験では、このような難治例に対して50%を超える寛解導入率(部分寛解含む)を示した。これを受け、COGでは初発T-ALLに対して、ネララビンを多剤併用療法に加えるAALL00P2試験を行った。ネララビンの副作用として問題となるのは重篤な神経障害であるが、ネララビンの追加は安全で、HR T-ALLの5年EFSは73%であった。

このような背景のもと、AALL0434試験はPhaseIII試験としてネララビンの効果を調べるべく行われることとなった。ランダマイズでネララビン群になった場合は、nelarabineの投与量650mg/m2/day(5日間投与)が6回行われた。試験の特性上、まずはHR群のみで安全性をきちんと確かめたうえで、IR群に対してもランダマイズが行われた。注意点としてAALL0434試験ではIL群とHR群は12Gyの予防的頭蓋照射が基本的に行われている。AALL0434試験のリスク分類は以下のようになっている。
LR群:1-10歳、初診時WBC5万未満、CNS1、精巣病変なし、Day 15でM1(芽球5%未満)のrapid early responders (RERs)、かつDay 29 MRD<0.1%をすべて満たす例
IR群:LR群でもHR群でもない例
HR群:Day 29がM2(芽球5-25%)もしくはMRD≧1%以上の例

ネララビン投与のランダマイズは659例に対して行われた。やや離脱例が多いのは気になるが、同意をInduction後に取り直すプロトコールなので、どうしてもInductionの結果をみて(場合によってはMRDもみれる?)離脱したくなる例が増えてしまうのであろう。また、Induction Failure例はHD-MTX+nelarabine投与を受け、強化療法後にM1/M2(芽球25%未満)の場合に試験継続とした。全体の約4%が試験を離脱して移植治療を受けている。

離脱例も含めた合計1562例のAALL0434試験のT-ALLの予後の解析結果は、5年EFSが83.7%、OSが89.5%であった。ネララビンの追加は予後(DFS)を改善しており、5年DFS/OSはネララビン有が88.2%/90.3%に対し、ネララビンなしが82.1%/87.9%であった。

MTXの投与方法はC-MTXがHD-MTXよりもHR群で優位性があったが、MTXの投与方法とnelarabineの有無の組み合わせでも、C-MTX+neralabine群が最も予後を改善した。一方でHD-MTX+neralabine群は最も予後が不良であった。

再発などのイベントを見てみると、ネララビンの追加はCNS再発を大幅に減らしていることが分かった。CNS再発の5年累積発生率はネララビン群が1.3%に対し、非ネララビン群では6.9%であった。特にCNS3例(全例がHD-MTX群)に対しても有効で、CNS再発がネララビン群は3.4%に対し、非ネララビン群は21.4%と大きな差がみられた。

リスク分類別の結果を見てみると、(5年DFS/OS)
IR群:nelarabine群が90.8%/91.3%、非nelarabine群が86.3%/92.4%
HR群:nelarabine群が83.5%/88.5%、非nelarabine群が74.1%/79.2%
という結果であった。

Induction Failure群はランダマイズなしでHD-MTX+nelarabine投与を受け、5年DFSは53.1%であった。CNS3例はランダマイズなしでHD-MTX投与をうけ、5年DFSはnelarabine群が93.1%、非nelarabine群が67.9%と、極めて大きな差がみられた。

Day 29のMRD別の結果は、(5年DFS)
MRD<0.1%:nelarabine群が92.3%、非nelarabine群が89.0%
MRD≧0.1%:nelarabine群が83.5%、非nelarabine群が73.4%
とやはり高リスクな症例でネララビンの効果が大きかった。

合併症について、Grade3以上の運動感覚障害はネララビン投与の有無で差は見られなかった。Grade3以上の中枢神経毒性の差も見られなかった。一方でランダマイズなしでHD-MTX+nelarabine投与を受けたIF群において、2例がネララビン投与に関連して重篤な中枢神経毒性を呈し、亡くなったのは注意しておきたい。

情報の得られた1390例の登録T-ALLのうち、333例(24%と結構多い)がランダマイズ前に試験を離脱している。うち24例(9.6%)が造血細胞移植を受けている。ランダマイズ後に離脱し、造血細胞移植を受けた例は23例(2.5%)であった。試験を離脱し移植を受けた例とそのまま試験を継続した群では、ハザード比3.32(1.34-8.23)と移植例の予後が悪かった。しかし、離脱したいと思わせる状況ということを考えると、公平な比較はできないのかもしれない。一方でIF群で離脱し移植した群とHD-MTX+nelarabineの群を比較すると、予後に差は見られなかった。

さて、ネララビンはどれほど実際に有効なのだろうか。確かにネララビンの投与は小児および若年成人のT-ALLのDFSを改善したが、OSは両者で統計学的な差は見られなかった。もちろんHR群でより改善傾向ではあり、統計学的な差はないだけで、OSに対しても効果はあるのかもしれない。少し気になるのが、図3のKM図をみてみると、非ネララビン群は3年以内にDFS/OSカーブがプラトーになっているのに対し、ネララビン群はその後6-7年にわたってじわじわとイベントが起きていることである。しかも最終的にはカーブが重なっている。

T-ALLは数年以内に再発し、その予後は極めて悪いというのが今までの通例ではあった。その再発もCNS再発が多い。ネララビンはCNSへ浸透し、実際にCNS再発を大きく減少させた結果であった。実際に長期に観察してもCNS再発は増えていない。それでは、なにが実際に治療後しばらくしてからイベントをおこしているのだろうか。観察期間が5年以上十分とれている例は試験開始直後から登録されているHR群ばかりだったということだろうか。実際にイベントの数自体は多くないことや、後半のイベントでのカーブの落ち具合を見ると、かなりの例がそれまでにセンサーされているのではないかと思われる。また、KMの結果は別として、本論文上の数字は5年の時点でのDFS/OSがほとんどである。以上を踏まえると、一応DFSはわずかに有意差は出ているが、今後IR群も含む多くの例がより長い観察期間を得たときに、はたしてどういう結果になっているのかは気になるところである。

また、IF例に限られてはいたが、2例に重篤な神経合併症がおき、死亡していることもよく覚えておかなければならない。しかし、この極めて予後不良な群に、移植なしで同等のEFS53%をもたらす治療も非常に重要である。しかし、この辺りは十分な臨床情報が得られていない中での比較の可能性もあり、今後の実践で検証されていくのではないだろうか。

いずれにしても、ネララビンはT-ALLの治療に今後なくてはならない薬剤となるだろう。

Dunsmore KP, Winter SS, Devidas M, et al. Children’s Oncology Group AALL0434: A Phase III Randomized Clinical Trial Testing Nelarabine in Newly Diagnosed T-Cell Acute Lymphoblastic Leukemia. J Clin Oncol. 2020;38(28):3282-3293. doi:10.1200/JCO.20.00256

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